コラム

~北海道伝統の焼き物・こぶ志焼~

2021.08.18

現地レポートのコラム。
伝統工芸品ライターの上田さんからの共有です。

<歴史と特徴>

1946年に初代、山岡三秋が創窯。
二代目の憬、三代目の千秋と75年間もの間受け継がれ、北海道では現存する最も古い窯となっている。
全国の窯元では珍しく、器を作る土の選定、釉薬(ゆうやく)作りから窯の整備、焼きまですべてを一貫して行っている。

初窯を焚いた時に、桜とともに北国に春の到来を告げる辛夷(こぶし)が咲いていたことから『こぶ志窯』としたことが由来。道民からは『こぶ志焼』として親しまれている。こだわりは『北海道のやきものを広める』そして『手作りで安く、使い易く』。

~ろくろ回し後の乾燥風景~  


ガス窯と電気窯を使っており、焼きの方法によって釉薬の色の出方が違う。電気窯の導入は北海道内ではこぶ志焼が初。土の選定と調合の比率、焼きの方法の組み合わせは無限大。それを先代からの技術の伝承に加え、たった一人の職人の経験と業によってより磨かれたものとなり、現在も道内をはじめ日本全国に愛用者が広がる。
*全国の産地ではたいてい分業制がほとんど。工程ごとに専門家がいて地域が一体となって産地とされていることが多い。

焼き物というと地味な色合い、物や形が特徴的なものが多い印象だが、こぶ志焼は使いやすい形にこだわり釉薬の色合いで特徴を出している。どっしりと構える重厚感がありながらも、比較的明るく現代的な華やかさも持ち合わせ、若い年代のファンも多いという。


海鼠釉(なまこゆう)は歴史が古くこぶ志焼きの代名詞となっている。他にも焼き物の中で出しにくい赤色の辰砂(しんしゃ)や日本古来からの焼き物を代表する緑釉、シンプルな中にも温かみを感じる白釉などがある。

<作業工程>

大まかな工程は以下の通り。

・土づくり
・釉薬作り
・ろくろ回し(作品形成)
・乾燥
・素焼き
・釉薬付け
・本焼き(窯詰~窯出し)
・出荷

<釉薬>

焼き物の色付けは化学反応によるもので、ガス窯で還元焼成をするか、電気窯で酸化焼成をするかで色合いが変わる。例えば、銅は酸化させると緑色に、鉄は酸化させると茶色になるという具合。試験を繰り返し、素材の調合の比率を微調整しながら使える色を作り上げていく。

~釉薬付け後の乾燥風景~  

<窯詰~窯出し>

効率よく熱が回るように作品を並べる。中にはあえて炎が抜けるように作品の間隔を大きく空ける焼き物もある。こぶし焼は一度に大量に入れ焼くことでコストをなるべく抑え低価格を実現させている。計算しつくされた配置があり、器の形、釉薬の性質などによってその都度変わるという。

丸1日かけて焼き、電気窯では4日間、ガス窯では1週間かけて冷ます。焼きの時間と温度管理が命で、5分単位で窯を止めるタイミングを調節するという。
焼きの時間によって釉薬の滴り方も変わるために、その温度と時間調節が要となっている。

<見学レポート>

今回はろくろ回し、窯詰~窯出しを見学させていただきました。

~ろくろ回しの風景~  

千秋さんの職人技で一瞬で形が整っていく。とんぼ(寸法を計測する道具)を使い、一つの形の調整にわずか1分ほど。そのスピードは圧巻。さらに解説など会話していただきながら作り上げられていて、プロの業をみさせていただきました。
窯に入れるための棚組みは一切の無駄がなくびっちりと。どこにどの色の器を置くか、色も飛んでしまい横の器に移ることもあるそう。いかに効率よく釉薬の色の配列も考えながら配置し、パズルのようで楽しそうでした(笑)

~窯入のための陳列~

いよいよの窯出し。とても感動!の一言。あの無機質な色をしていた器たちが色鮮やかに変貌。焼く前では見分けがつかなかった物も、こんなにもいろいろな色があったのかーと驚き。貫入(陶器の表面に入るひび)の音は澄んでいて、ずっと聞いていられるような心地よい音色でした。とても貴重な体験が出来ました。

<感想>

職人の千秋さんはとても気さくで明るい方。
職人さんとは寡黙で黙々と作業を行う印象でしたが、千秋さんは違いました。
中でも感動したのが、製品としてこぶし焼を世の中に普及させていこうという姿勢です。北海道にもやきものがあるということを知ってもらいたいという思いで、出荷をする際の検品の基準が厳しく、どこかに卸しても悪品がなく返品がほとんどないので、そのままお客さんのもとへ届けられるようになっているということです。

~窯出し風景~
~窯出し風景~

↑~辰砂釉と孔雀釉~  


一つひとつ丹精を込めて手作りで作りつつ、いかに安く大量に作るかを念頭に置き、本物を追求する。一回の窯でいかに多く焼くか。計算しつくされて無駄をなくすことで手作りでの量産を可能にしている。それが使い手に取っての良心的な安価な価格を生み出している。使い手を考えての企業努力というものを肌で感じた。

ぜひ、一度手に取ってその質感と手作りのぬくもりを感じてもらいたい。

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